豊田先生の論文, JPSJ57(1988)3089、V3SiとNb3Snで、超伝導が起きると、マルテンサイト変態(MT)が阻害されるという話。
E(格子歪)=格子系の歪エネルギ−電子系の利得
を計算すると、ある歪のところでミニマムが出来るというのがミソ。電子系の利得はバンド・ヤンテラー(BJT)から来る。※バンド・ヤンテラーのやさしい説明はここ、物性研の溝川先生。
このミニマム位置が、超伝導になると自由エネルギーの二次の項が変化するのでずれる、というのが、超伝導で構造相転移が阻害されることにつながる。ちょっと前のLSCOの中性子の論文で、山田研の木村さんの、中性子でLTT相がソフト化して降りてくるものの、Tcに阻害されてまた上がって行く話で、この豊田先生の論文が引用されている。
格子歪のエネルギーは調和振動子でuの二次で正。電子系のエネルギーは、uに比例したdバンドの分裂を、三次元自由電子的状態密度を仮定して、四次の項まで計算する。
ただし、E_Fを固定すると論文の係数と合わなかった(自分の計算ミスかも)。歪によってE_Fが変わるとは論文のどこにも書いていないのであるが、それが自明な話なのか、それとも、実は深いsバンドとのオーバーラップのせいで、E_Fは一定で、係数が異なるのは別の原因によるのか、、、。ここで、どうしてE_Fの変化に目が行ったかというと、パウリ磁化を計算するとき、統計力学の教科書では、μが磁場変化しない(一次では)ことの証明が必要、と書いてあるからだ。
メールで先生に聞いてみると「大分昔のことなので」と、片岡さんに丁寧に説明いただいた。結論から言うと、dバンドの電子数が多いので電子数固定としたとのこと(sバンドとオーバーラップしているからこそ変化する可能性があるらしい)。
落ち着いて、もう一度、積分を四次までテイラー展開してみたが、今のところどうやっても比が-1/12にならず、-5/48になってしまう。自分の計算がどこを間違えているのか、、、。